インフルエンザのパンデミックで、それらしきものは16世紀中ごろヨーロッパで流行していますが、記録に残る最大のパンデミックは、1918年から流行し始めた、いわゆる”スペイン風邪”です。このパンデミックによる死者は最終的に4000万人から5000万人におよんだと言われています。感染者数は、推定6憶人で、当時の全世界の人口の半数の人々がスペイン風邪に罹ったことになります。日本では総感染者数約2380万人、死者数約38万9000人と記録されています。今流行している新型コロナウィルス感染の段ではありません。しかし、まだ、第一波で、収束の気配もありませんので、これから第二波、第三波が襲来したらどうなるか油断できません。
このパンデミックは、”スペイン風邪”と呼ばれていますが、発祥は1918年3月、アメリカ、カンザス州の陸軍基地で始まっています。ちょうど第一次世界大戦の時期と重なり、アメリカからヨーロッパに派遣された兵士のなかに感染者がおり、瞬く間にヨーロッパに拡大しました。この拡大の要因に、軍隊特有の、密集・密閉・密接が関与しています。しかし、戦争を行っている国ではこの感染を軍事機密として報道させず、中立を保っていたスペインが主要な情報発信源となったため、”スペイン風邪”と呼ばれるようになりました。第二波は1918年秋に押し寄せ、ほぼ世界中に拡がり、病原性もさらに強まったと言われています。さらに第三波は1919年春から始まり、1920年まで続き、やっと春に収束しました。日本での主な被害は第三波によるものです。
このほか、インフルエンザの大流行は、1957年の”アジア風邪”、1968年の”香港風邪”、記憶に新しいもので、2009年の新型インフルエンザの流行があります。新型以外は遺伝子型もわかっており、ワクチンもできています。普通の季節性インフルエンザに変化しました。毎年、どの型の流行が起こるかを予測し、ワクチンの予防接種が行われるようになりました。新型コロナウィルスもやがてワクチンができ、普通の感染症に変化すると思われます。
最近、地球温暖化のため、シベリアの永久凍土が溶け出したとのニュースがありました。貴重な資源が容易に発掘できる利点もありますが、それ以上に危険な要素を含んでいます。先のスペイン風邪の病原菌であるインフルエンザウィルスの発生源は、アラスカの凍土内に埋もれていた動物死骸に潜んでいたウィルスで、地表に露出した死骸を鳥がつついて、その中にいたウィルスが鳥に感染し、さらに変異を起こしたウィルスがヒト感染を起こした可能性が高いことがわかりました。1997年アラスカ凍土にあった死骸の肺組織からウィルスを抽出し、ゲノム解析したところ、スペイン風邪と同じ型(H1N1亜型)が証明されました。氷河期に埋もれた細菌やウィルスに対して、現代人の誰も抗体をもたず、容易にパンデミックになります。実際、2016年、シベリアのある村では、まれな疾患となった炭疽菌の集団感染が起こっています。軍隊まで出動し、村はロックダウンされ、パンデミックには至りませんでした。これは、シベリア凍土内に埋もれていたトナカイの死骸から炭疽菌が運ばれたためでした。地球温暖化とパンデミック、今後の重要なキーワードになりそうです。
下の写真は、白馬大池と向こうに雪倉岳、となりは、大池周辺のお花畑です。