院長こらむ:アンチエイジングのお話 その19

カロリー制限で、長寿が得られると述べてきましたが、なぜ長寿が得られるのかは、まだ十分に解っていないようです。
そのメカニズムの候補として、サーチュイン(Sirtuin)というタンパク質の脱アセチル化酵素があります。
タンパク質は化学反応でアセチル基(-COCH3)がくっついたり、離れたりすることにより、その働きが変化するそうです。
そのアセチル基をタンパク質よりはずすのを助けるのが脱アセチル化酵素と言います。

これが注目されるきっかけとなったのは、酵母や線虫などの下等生物を使った実験で、いくつかある、この脱アセチル化酵素の一つを欠損させると寿命が短縮し、過剰発現させると寿命が延長することがわかりました。
その後、この脱アセチル化酵素は、下等生物ばかりでなく、哺乳動物でも保存されていることがわかってきました。

現在、哺乳動物に、7種類のサーチュイン(Sirt1~7)が同定されています。その中で、酵母で長寿と関連が認められたものと構造や機能が似ているサーチュイン1(Sirt1)が注目されているそうです。
この酵素は、進化論的に保存されたものですので、長寿遺伝子と呼ばれるようになりました。
このSirt1は、飢餓やカロリー制限によって活性化されると言われています。
栄養欠乏状態で、どのように活性が制御されているかは、現在進行形の研究課題で、小生には理解できませんので、ここでは省略します。
このように、カロリー制限は、長寿に役立つと言うことに、理論付けがされつつあります。

さらに、老化と直接結びつく病気(動脈硬化、認知症、骨粗鬆症、糖尿病など)とSirt1との関連も研究テーマになっているそうです。
また、赤ワインに多く含まれるポルフェノールの一種のレスベラトロールによってもSirt1が活性化されることもわかっています。
しかし、かなり大量の赤ワインを飲み続けないと活性化を起こすレベルにはならないそうです。

長寿に役に立つと、赤ワインをほぼ毎晩飲んでいますが、ちょっとがっかりしました。
最近、このSirt1活性化を目的とした創薬も注目されています。レスベラトロールもその候補の一つになっています。
さらに、Sirt1活性化は、インスリン抵抗性を改善することもわかっており、糖尿病薬の開発にも役立っているそうです。
逆に、Sirt1阻害薬は、細胞の老化を進めます。ターゲットを癌細胞にすると、抗癌剤にも成りうるとのことです。

このようにサ長寿遺伝子サーチュインには、いろいろのロマンがあります。
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(秦保博氏提供)