院長こらむ:アンチエイジングのお話 その10

腸管内に常在している細菌を腸内細菌と呼びます。その数は、数百種類で、約100兆個と膨大な数です。重さは、併せて約1.5~2Kgになると言われています。特に、回腸から大腸で増殖した多種多様な細菌が腸内壁面に生息している様が、お花畑(flora)のようだと例えて腸内フローラと呼ばれています。日本語で、腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)と言います。なぜ、回腸から大腸にかけて細菌が繁殖するかは、胆汁酸が関係していると言われています。胆汁酸は、細菌の細胞膜を溶解する作用があり、細菌の増殖を妨害します。十二指腸で分泌された胆汁は、空腸を経て回腸で90%以上肝臓へ回収されます。つまり、回腸内の胆汁酸濃度は急激に減少し、細菌の増殖に好都合になります。ちなみに、私たちの毎日の排便の内容は、約三分の一が腸内細菌やその死骸、三分の一が食物の残渣、残りが脱落した腸粘膜細胞やミネラル分、胆汁などです。また、胆汁の組成の抱合型ビリルビンが還元されてウロビリノーゲンに、大腸でさらに還元されてステルコビリノーゲンに、一部酸化されてステルコビリンとなり、これが糞便の茶色の元になります。腸から再吸収されたウロビリノーゲンは、体内で酸化されウロビリンとなって腎から排泄され、尿の黄色の元になります。なお、ビリルビンが胆汁として排泄できなくなると、体内に蓄積され、黄疸になります。
腸内細菌叢のそれぞれの細菌は、お互いに共生しているだけでなく、消化できない食べ物の消化を助け、エネルギー源としたり、ビタミンB類を提供しています。また、外部から侵入した病原細菌の増殖を防止し、感染防御に役立っています。これらの細菌叢は、個人個人が生まれてから獲得したもので、それぞれの生い立ちが違うように、腸内細菌叢にも個人差があります。ただし、その組成は不変でなく、食餌の内容や加齢などによって変化します。健康な人の腸内では、人の体に有用な働きをする細菌(善玉菌)と、腸内容物を腐らせたり、有害物質を作ったりして、人に有害な働きをする細菌(悪玉菌)のバランスがとれた腸内細菌叢になっています。このバランスが崩れ、人に有害な物質が増えると、老化を早めたり、いろんな生活習慣病を引き起こしたりします。アンチエイジングには、この腸内細菌叢のバランスをいかに永く保つかが鍵になると思われます。次回は、腸内細菌叢:腸内フローラのバランスについて述べたいと思います

えびの高原のミヤマキリシマ(’16,6/4):韓国岳登山の予定でしたが、生憎の雨と靄のため、えびの高原にある登山口で断念。 えびの高原道端で佇む野生の鹿。人を恐れません。
登山断念のため、近くの霧島神宮に参拝。
霧島神宮:欽明天皇(6世紀)の時代に、高千穂峰と火常峰の間に社殿が建立されたのが始まりとされる。その後、たびたびの火災にあい、1484年、島津忠昌の命により現在の地に建立されたが、これもたびたび炎上し、1715年、島津吉貴の奉納で現在の社殿が再建された。
人吉市にある国宝・青井阿蘇神社にも参拝。
青井阿蘇神社:この熊本地震で崩壊した阿蘇神社から、806年、分霊を受け、当地、球磨郡青井郷に祀ったのに始まるとされる。その後、11世紀半ばに再興され、当地の領主となった相良家の篤い崇敬を受けた。阿蘇神社の分霊社であるが、南北朝や戦国時代に相良家と阿蘇神社が対立することが多く、阿蘇神社との関係は薄い。