広域にはやった疫病の痕跡は、古代メソポタミア文明時代や紀元前13世紀あたりの中国で甲骨文字の中に見られていますが、有史上に認められた大多数の犠牲者を出した疫病は、紀元前430年代のアテネの疫病(病原菌は不明)、165-180年ごろのローマにはやったアントニヌスの疫病(病原菌:麻疹?天然痘?)195-220年ごろ中国、建安の疫病(病原菌:腸チフス?)が知られています。その頃は交通網が未発達で、人の移動が限定されていましたので、ある地域の流行り病で終わっていました。
感染症のパンデミックで、有史上最初の重大な出来事は、14世紀にヨーロッパで大流行した黒死病(病原菌:ペスト)です。その後、ペストは現在まで続いており、未だ撲滅には至っていません。16世紀になると、コロンブスの新大陸(南北アメリカ大陸)発見にともない、天然痘をスペイン人が新大陸に持ち込み、天然痘の大流行となりました。この天然痘は、もちろん日本にも持ち込まれ流行し、やっと1955年になって根絶されました。逆に、新大陸からヨーロッパに持ち込まれ、未だに撲滅されていないのが梅毒です。梅毒は今、日本で流行の兆しが見られています。19世紀から20世紀にかけて大流行したのはコレラです。20世紀にはインフルエンザのパンデミックが有名です。膨大な犠牲者が出ました。1918-1919年、いわゆるスペイン風邪、1957-1958年のアジア風邪、1968-1969年の香港風邪です。記憶に新しいところでは、2009年の新型インフルエンザですが、恐れたほど犠牲者は出ませんでした。1980年代から全世界に感染が広がっている後天性免疫不全症候群(エイズ)もパンデミックのひとつでしょう。
21世紀に入ると、新しいコロナウィルスが物騒な動きを見せています。2002年に発生した重症急性呼吸器症候群(SARS),2012年の中東呼吸器症候群(MERS)、それに昨年(2019年)末から猛威をふるい、未だ収まる気配のない新型コロナウィルスによる急性呼吸器疾患(COVID-19)です。次回より各パンデミックをもう少し詳しく調べてみたいと思います。
さて、先日、この新型コロナウィルス感染拡大にともなう緊急事態宣言が全都道府県に出されました。はたして2週間後に感染患者発生数が劇的に減少しているでしょうか?日本人の底力を見せましょう。