今回は、脂肪細胞から遊離される物質について述べたいと思います。脂肪細胞から遊離される物質で、よく知られているものは、遊離脂肪酸、レプチン、アデイポネクチンです。
遊離脂肪酸:主に内臓の脂肪細胞から血中に遊離される。
遊離脂肪酸そのものは、水に不溶で血漿蛋白のアルブミンと結合して可溶性となり、血中を循環します。
循環した遊離脂肪酸は、骨格筋や肝細胞のインスリン受容体のリン酸化の障害(詳しい機序は難しい!)を起こし、正常なインスリンの働きを障害します(インスリン抵抗性)。
つまり、体内に取り込まれた糖のコントロールが上手くいかなくなり、糖尿病やメタボリック症候群の憎悪と関連します。
一方、この遊離脂肪酸は、褐色脂肪細胞内に多く存在するミトコンドリアがエネルギーとして消費し、熱産生に役立っています。
褐色脂肪細胞は、悪玉となった遊離脂肪酸の処理係として働き、生体にとって善玉脂肪細胞です。
レプチン:肥満が進み、肥大化した脂肪細胞からレプチンが遊離されます。
このレプチンの作用機序は、やや複雑です。まず、脳の肥満中枢に働き、食欲を抑制し、体重増加を制御する方向に導きますが、過剰にレプチンが出続けると、肥満中枢がレプチンに耐性になり、ますます肥ることになります。
一方、脳の視床下部というところに作用することにより、交感神経を興奮させ、血圧上昇(高血圧)を来します。
さらに、腎臓にも作用して、レニンというホルモンが分泌され、レニン・アンギオテンシンが関与する高血圧も加わります。
肥満の人に高血圧が多いのはこれらのためです。この状態が長く続くと動脈硬化が起こり、脳卒中、心筋梗塞のリスクが高くなります。
アデイポネクチン:脂肪細胞が肥大化すると、遊離脂肪酸やレプチンは、分泌が増加しますが、このアデイポネクチンは、逆に減少します。
血中アデイポネクチン濃度は内臓脂肪量に逆相関します。
作用として、インスリン受容体を介さないで細胞内へ糖取り込みを促進、細胞内の脂肪酸を減少させてインスリン受容体の感受性を上げる作用、脂肪酸の燃焼などがあります。
このような善玉であるアデイポネクチンを増加させるのに、低炭水化物ダイエットが役に立つという報告もあります。
このように、肥大化脂肪細胞は、糖尿病、高血圧、動脈硬化症などの生活習慣病に関与し、憎悪させます。
日頃より、脂肪細胞を肥大化させないように、言い換えれば、肥らないように、食生活に気を配り、適当な運動を心がけることがアンチエイジングに繋がります。
真冬のマッターホルン(スイス・アルプス)を撮ってきましたので、ご覧ください。
Matterhorn(標高4478m)のいろんな表情をご覧ください。 | |