院長こらむ:アンチエイジングのお話 その14

最近、老年医学や介護の世界で、フレイルと言う言葉をよく耳にします。

このフレイルという言葉は、2014年、日本老年医学会が、frailty  (か弱さ)から語感に配慮して提唱した造語です。
それによると、「加齢による予備力低下が原因で、些細な外乱因子に対して健康障害を来しやすい状態」ということですが、未だ、診断法は統一されていないようです。
その中で、Fried  らが提唱したものが狭義のフレイル(身体的フレイル)としてよく採用されています。

1)歩行速度低下
2)筋力低下
3)活動性低下
4)疲れやすい
5)体重減少

のうち、三つ以上該当すればフレイル、一つまたは二つであればプレフレイルとしています。
言い換えれば、身体的フレイルとは、介護状態の前段階で、そのまま放置すれば要介護へ、さらに進めば、老衰または死へと向かいます。一方、広義のフレイルとは、これに加えて、認知機能低下や、うつなどの精神・心理的フレイル、閉じこもりや孤立などの社会的フレイルを含めてとらえています。

フレイルは、介入することにより進行予防または改善が可能といわれており、今後、このフレイルの段階を早く見つけ介入することが、健康長寿を目指す高齢化社会にとって重要となります。
具体的な介入として、栄養と運動によるフレイル予防があげられます。
もちろんバランスのとれた栄養素(タンパク質、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラル)が必要ですが、介護の契機となる転倒・骨折を防ぐには、筋力の維持、強化、骨粗鬆症の予防が大事です。栄養素としては、タンパク質(アミノ酸)ビタミンD不足に気をつけましょう。
実際に、タンパク質(アミノ酸)摂取と、その人に応じた運動介入をすることで、骨格筋機能の改善効果や骨格筋量増加効果が認められています。

さて、健康長寿とは、高齢になっても、頭(脳)がしっかりして、認知機能が保たれていること、体が動き、移動の目的が達成できること、精神(こころ)が健康であること、うつでないこと、社会生活が問題なく営めていることなどを言います。
そのためにも、フレイルに至る前から、いろんな危険因子(運動不足、栄養不足、不眠、高血圧、糖尿病、うつ、喫煙など)を避けたり、いざ、病気になったら、まじめに治療を受けましょう。日常生活では、十分な睡眠、適度な運動に努め、さらに、知的好奇心を意識的にに持ち、趣味を探しましょう。
認知症予防にもつながります。
高齢者に近づいている方は特に、このフレイルという概念を知り、早くその兆候を認知し、早めの介入により、要介護にならないように努めましょう!

花しょうぶ(玉名市・裏川) ミヤマキリシマ(平治岳)