院長こらむ:アンチエイジングのお話 その9

熊本地震発生から約2ヶ月が過ぎました。まだ、ときどき余震がありますが、その頻度も徐々に減って、何とか落ち着きを取り戻しつつあります。また、街にも活気が出てきており、一安心しています。しかしながら、まだ、避難されている方も多く、家が崩壊した方々への仮設住宅も滞っている現状もあります。まだまだ、熊本は大変です。’がんばれ熊本’のバッジを付けた松山選手も調子が今ひとつで、これも心配です。がんばれ松山。
さて、生命維持には、栄養が必要なのはいうまでもありません。栄養過多は、逆に悪影響を起こすことは、糖尿病の発症を見ればわかります。栄養失調になるほどの飢餓は、これも生命維持に悪影響を及ぼすことになりますが、軽度の飢餓状態は、先に述べたように、生命延長に良い影響を及ぼすことが知られるようになりました。それでも、栄養素の吸収、代謝、排泄をいかに健全に維持するかが、生命維持だけでなく、アンチエイジングにとって重要と考えられます。今回は、まず、栄養素の吸収を行う小腸のお話をします。
栄養素の吸収は、主に小腸で行われます。小腸は上から十二指腸、空腸、回腸に区分されます。十二指腸は、胃から続き、指12本を並べた長さ、約20数cmの腸で、膵臓と肝臓から、膵液、胆汁が分泌され、腸液とともに、食べ物の消化を行い、また、胃酸で酸性になった内容物をアルカリ性に中和します。小腸の主なものは、空腸、回腸で、全長6~7mあり、5分の2が空腸、5分の3が回腸です。空腸は、内容物の流れが速く、内容物が空になっていたので空腸と名付けられました。空腸で栄養素の消化、吸収が盛んに行われます。吸収に役立っているのが、絨毛(じゅうもう)と呼ばれるビロード状の無数ひだです。このひだを広げると、小腸の600倍にもなり、吸収力を高めています。この絨毛は、空腸でよく発達し密で、回腸では粗になっています。
小腸での食べ物の消化は、膵臓から分泌される膵液と小腸上皮細胞から出る消化酵素によって行われています。炭水化物、タンパク質、脂肪などを消化し、アミノ酸、ブドウ糖、グリセリド、脂肪酸などの最終分解物にします。胆汁は、脂肪を乳化して消化酵素の働きを助け、分解産物を吸収しやすくします。また、胆汁は、その90%以上が回腸で吸収され、肝臓に戻されます。この胆汁環流が、後に述べる、細菌増殖に関係してきます。
小腸の粘膜は、吸収を行っているだけでなく、身体の抵抗力をつける免疫も行っています。小腸の絨毛内粘膜下層にリンパ管が発達し、小さな孤立リンパ節や、塊状の集合リンパ小節(バイエル板)があります。このバイエル板は回腸に集中しています。ここの細胞(M細胞)は、異物の抗原を認識し、マクロファージやリンパ球に情報を与えます。このリンパ球はバイエル板内で増殖し、形質細胞(免疫グロブリンを産生する抗体産生細胞)に分化して抗原を攻撃する免疫グロブリンA(IgA)を分泌し、小腸粘膜免疫の主役を演じます。小腸は、生命維持に絶対必要な免疫臓器でもあります。
回腸は、免疫に関与するだけでなく、腸内細菌の増殖開始の場所でもあります。さらに、これらの腸内細菌の集まりの乱れが免疫に影響し、体の不調をきたすようになることが解ってきました。次回は、腸内細菌のお話をします。

我が家の紫陽花と愛犬もも:13歳と老犬になってまいりました。 花菖蒲:磯庭園(鹿児島市)