院長こらむ:膀胱のお話 その3

膀胱が罹患する疾患の中で、最も頻度が高く、一般的なものは、膀胱炎です。前回述べた、薬剤性膀胱炎は、特殊なもので、大半は細菌が原因となる膀胱炎(細菌性膀胱炎)です。細菌性膀胱炎には、誘因や原因の病気が見つからないものを、単純性膀胱炎、誘因となる病気に合併して起こったものを、複雑性膀胱炎と呼んでいます。また、臨床経過の長短や起こり方により、急性膀胱炎・慢性膀胱炎と区別することもあります。通常、単純性のものは、急性膀胱炎の、複雑性のものは、慢性膀胱炎の経過をとるものが多い。
 急性単純性膀胱炎は、女性が圧倒的に多いとされています。男性は、比較的まれです。これは、女性の場合、解剖学的に尿道が短く(成人で約4cm前後)尿道外より細菌が侵入しやすいためです。罹患頻度の高い年齢は、性的活動期にある20~30歳代と、閉経前後の中高年期にピークがあります。閉経と関係があるのは、閉経により、膣内の乳酸菌が減少し、細菌が繁殖しやすいためと言われています。原因菌の多くは、大腸菌です。薬に対する反応もよく、3~4日間の抗菌剤服用で完治します。治りが悪ければ、その基となる病気を有する複雑性膀胱炎の可能性があります。
 複雑性膀胱炎の基となる病気としては、子供さんの場合は、主に、尿路奇形で、成人男性の場合は、前立腺肥大症・前立腺炎・膀胱結石・膀胱憩室などがあり、女性では、膀胱機能不全を来した神経因性膀胱(膀胱から十分に尿が出ないために、膀胱内に尿が残り、菌が繁殖しやすい)の頻度が高い。尿が出ないために、尿道に専用の管を留置することがありますが、これも医原性の膀胱炎を起こしやすい。
 女性の中には、膀胱炎を繰り返す方がおられます。まずは、原因となる病気がないかを検索します。前述した、神経因性膀胱で尿の残りが多いかを調べます。多ければ(100~200mlと残尿がある場合があります)まず、内服を行いますが、効果がなければ、自己導尿(自ら専用の管で残りの尿を排出)を勧めています。若い女性で膀胱炎を繰り返す場合は、まずは、性行為後の排尿を勧めています。明らかな基となる病気が見あたらなく、膀胱炎を繰り返す中高年の女性は、膣内細菌の変化のためと言われていますので、まずは、婦人科に相談を勧めます。女性ホルモン剤の使用も一つの手です。

雲上の富士山(赤岳より) 日の出(赤岳より)