院長こらむ:腎臓のお話 その6

腎臓は骨の代謝に関連していることをご存じでしょうか。骨に無くてはならない物質は、カルシウムです。血液の中に含まれるカルシウムの濃度はおおよそ9~10mg/dl前後の狭い範囲に維持されています。カルシウムの約40%は蛋白と、10%は無機リン酸・クエン酸などと結合したもので、残りの約50%がカルシウムイオンとして含まれています。カルシウムは、食物から腸で吸収されるのはもちろんですが、カルシウムイオン濃度の恒常性を維持するには、骨からの吸収・生成のバランスと腎尿細管におけるカルシウムイオンの再吸収調節による尿中カルシウム排泄で調節されています。
 骨のカルシウム代謝と腎尿細管のカルシウム排泄調節を掌っているのが、副甲状腺(上皮小体)です。副甲状腺は、首前面にある甲状腺の裏側に、小豆大より小さなものが通常4個あります。名前は甲状腺と関係ありそうですが、働きは、全然違う臓器です。さらに腎臓はビタミンDを活性化し、腸からのカルシウム吸収に関係しています。カルシウムイオン濃度が低下したとき、それを上昇させるように作用するのが、副甲状腺ホルモンと活性型ビタミンDです。
 一方、カルシウム濃度を調節しているもう一つのものが、無機リン濃度です。CaxP(リン)を一定に保つように作用します。リン濃度が上昇しますと、組織へのリン酸Ca沈着が起こり、カルシウム濃度が低下します。リンは、腸からの吸収、体内における移動と腎尿細管からの排泄で調節されています。腎からの排泄には、これもCaとの相互作用的働きで、副甲状腺が関係しています。このように、カルシウムとリンは、切っても切れない関係となっています。
 血液検査で、血清カルシウム(Ca)と血清無機リン(IP)の値を見るとき、腎臓・骨・副甲状腺・ビタミンDがキーワードです。たとえば、腎臓結石を繰り返されている方で、高カルシウム血症を認めた場合、その裏に、副甲状腺機能亢進症(腫瘍)が隠れているかも知れません。