院長こらむ:性感染症のお話

性感染症(STD:sexual transmitted disease)とは、性行為によって起こる感染症(ばい菌がうつる)です。男性の場合、尿道炎が90%以上と言われています。この他に、陰茎ヘルペス、陰茎尖圭コンジローム、梅毒などが見られます。エイズが世間的に注目された時期には、少し減少傾向が見られましたが、’喉元過ぎれば何とやら’で、最近、また増加している印象を受けています。
 <男性尿道炎>原因となるばい菌(起炎菌)によって、淋菌性尿道炎(いわゆる淋病)クラミジア性尿道炎、淋菌・クラミジア混合感染性尿道炎、非淋菌・非クラミジア性尿道炎に区別されます。なぜ区別するかと言いますと、菌により薬の効き目が違うからです。薬の効き目は、また、時代の変遷が見られます。同じ薬をどこでも長期間使用していると、その薬に効かない菌(耐性菌)ができるからです。非淋菌・非クラミジアの起炎菌では、マイコプラズマが知られています。時に女性膣内に多いトリコモナス感染も見られます。
 <淋病とクラミジア感染の違い>最近の特徴として、淋病の相手は、オーラルセックスを行う風俗女が多く、クラミジア感染は、一般女性が多いようです。潜伏期間(性行為から症状発現までの期間)も違い、淋病は1週間以内に急激に発症し、クラミジア感染は、1-3週間と緩徐に発症します。症状も淋病は、猛烈な排尿時尿道痛と黄色い膿が尿道から排出し、クラミジア感染の場合は、尿道痛も弱く、痒いなどの不快感だけの場合もあり、尿道からの分泌物も無いか、サラサラしたものが多いという違いがあります。
 <陰茎ヘルペス>単純ヘルペスウィルス(1型・2型があります)の感染症です。性行為後、ウィルスは神経節に潜伏します。その後、ストレスなどにより活性化され、陰茎に水ぶくれ(水疱)やびらん(皮膚表層が剥けた状態)が起こります。自然に消退することもあります。初感染で終わるものは、1型に多く、再発を繰り返すものは、2型に多いと言われています。
 <尖圭コンジローム>ヒト乳頭腫ウィルス(HPV)による性感染症で、風俗女性からの感染が多い。陰茎の亀頭や包皮にブツブツした腫瘍が出来ます。多発の場合が多く、電気焼灼で治療しても、また、別の場所からよく再発します。根気良く、治療していきます。最近は、塗り薬もありますが、腫瘍部にピンポイントで塗らないと、周囲の健常皮膚が障害を起こします。
 <梅毒:陰茎>梅毒トレポネーマという菌の感染です。梅毒菌を持った女性と性行為を行った後、3週間ごろに陰茎に小さな硬い塊(初期硬結)ができます。まもなく、これが、壊れて下掘れ:潰瘍(硬性下疳)となります。痛みはありません。この時点で治療すれば、全身疾患の予防も可能です。放ておくと、自然に消退し、その後、全身の感染症となり、無治療で過ごすと、加害者にもなります。合併症で致命的なものは、大動脈瘤の破裂です。ある有名人もこれではないでしょうか。

9/14 南阿蘇のコスモスです。 南国(宮崎)生駒高原のりんご畑です。