院長こらむ:発熱を伴う泌尿器科疾患

高熱(39-40℃)を来たす泌尿器科疾患のほとんどは、急性細菌性感染症です。その三大疾患は、急性腎盂腎炎、急性前立腺炎、急性精巣上体炎です。それぞれについて、簡単に説明しましょう。
 急性腎盂腎炎:細菌が腎盂(腎臓から出た尿が最初に貯まる漏斗状の管)まで達し、そこで増殖し、炎症を起こした場合です。一般に、細菌は、膀胱(膀胱炎)より上昇してきます。何らかの原因で、膀胱より尿管に尿が逆流するために起こります。膀胱炎だけでは、発熱しません。子供で発熱を頻発する場合、先天的な膀胱尿管逆流を疑います。早く発見して、適当な処置をしないと、将来、腎機能障害を来たします。なぜ、発熱するかは、腎盂は腎実質と接しており、腎内より血液内に細菌が進入し、熱源になるためと思われます。
 急性前立腺炎:前立腺は膀胱の出口に存在し、中心部を尿道が貫いている分泌臓器です。精液の製造元です。精巣からやってきた精子の栄養・運動・保存などを手助けします。ここに、細菌感染が起こりますと、発熱します。同時に、おしっこの出始めに痛みを伴います。前立腺が腫れますので、排尿障害も起こします。過労や深酒などにより、前立腺に負担をかけた時、起こりやすいと言われています。また、発熱は微熱か、ほとんど無く、前立腺炎症状を来たす時、特に若い男性なら、クラミジア感染などの性病も考えておかなければなりません。無菌性またはあってもごくわずかな感染(?)で長期間前立腺炎症状(残尿感、頻尿、軽度の排尿痛・下腹部痛など)を訴えるとき、慢性前立腺炎と診断付けることがあります。この場合、発熱は致しません。急性前立腺炎の場合は、適切な抗生剤を使用すれば、まず、1-2週間で完治します。慢性前立腺炎の場合、不定愁訴も伴うことも多く、治癒には時間がかかります。
 急性精巣上体炎:精巣上体とは、以前は、副睾丸と言われていたものです。日本泌尿器科学会で用語が統一され、精巣上体となりました。精巣(睾丸)から出た精子が通る管が、屈曲しながら精巣の横に薄い白膜で被われ、一塊となって付着したものです。この細長い部位を、精巣から出た近位を頭部、続く部を体部、精管へ移行するところを尾部と区別します。ここに、細菌が何らかの理由で進入すると、39-40℃の高熱、赤く熱を持って腫れ、触ると、強い痛みを伴います。抗生剤投与で、数日で解熱しますが、硬く腫れた塊や痛みはしばらく続きます。若い男性で、性病によるクラミジア感染で、精巣上体炎を起こしますが、高熱を来たすことはまれです。また、区別しなければならないのは、流行性耳下腺炎(おたふく風邪)後の精巣炎です。これも、40℃近くの高熱を起こし、精巣が腫れ、触れると強い痛みを伴います。この時は、家族(子供など)におたふく風邪が起こっていないか聞くことが重要です。

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